「あの時の自分に手を差しのべる」という視点が、ひとつの社会還元かも。という仮説 vol.0028

青年海外協力隊

帰国報告会の対象者は、過去の自分

先日、令和7年度の宮崎県海外協力協会の帰国者報告会のスピーチ候補者とお話しました。その方は、広島大学人間社会科学研究科の小野亘(おのわたる)さん。

宮崎大学を卒業してすぐに青年海外協力隊に参加した、新卒隊員。小野さんは今後のキャリアに悩みながら、広島大学の大学院に入学した上で、協力隊に参加していたのだ。そのため、大学院は3年半通うことになったが、協力隊活動を研究の一環にしていたとのこと。2022年度1次隊・理科教育・ザンビアに派遣された。

2024年9月に帰国した小野さんは、2025年春から広島大学の博士課程に進学予定。
新卒から研究職に進むまでに色々な葛藤があったので、そのプロセスを帰国報告会でお話してもらうことになった。
発表内容については、ザンビアの文化紹介・ザンビアの理数科教育の現場から学べることなど、色々な候補があがった。それらの中で一番小野さんの熱が感じられた部分が、「新卒キャリア」の箇所であった。僕は気になって質問すると、
「新卒当時も、任期中も、そして今もキャリアについてはモヤモヤしているからです」と自身の不安を言語化してくれた。

「新卒隊員は、大学を卒業して派遣されるから、社会に出るタイミングを逃しちゃうわけじゃないですか。だから、派遣終了後、どのように社会と接点をもっていくのか悩むのです。だから、そんな新卒隊員に寄り添いたいです。」

このような熱い想いって当事者で悩んできたからこその発言。
「それって、小野さんが協力隊に参加する直前に聞きたかった内容じゃない?」と僕が聞くと、
「あっ、そうかも!あの頃の自分が聞いたら嬉しいはずです」と小野さん。

(最後に、オンライン参加の告知をしますので興味のある方は、ぜひご参加ください)

伝えたいことは山ほどあるから、削る大切さ

実は小野さん、ザンビアの理科教育の素晴らしい部分を逆輸入できないかをテーマに、発表を考えていた。日本の理科現場に取り入れることができる良さを体験してきたから。それを発表するってとても有意義なこと。きっと日本の教育現場が少しでも進化すること間違いなし。

でも、今回の発表は宮崎県で行う帰国報告会。現在、都城の高校生や一般参加も促したいと企画しているので、ちょっとイメージと合わない気がしていた。

それ以上に、今回、宮崎国際大学から新卒で参加予定(2025年度2次隊)の方も来てくれることになっていたので、小野さんとその方の出会いが脳裏をよぎった。ぜひ、新卒のその方のために話して欲しいなと。

発表時間は、9分。質問時間は10分の合計19分におさめる予定。当日はあと2人くらい話す。

9分の発表って、60分の発表と比べると実は大変。長ければ、少し脱線しても時間の調整ができるものの、9分だと時間調整がほぼできない。

しかも2年間の取り組みをたったの9分に圧縮するなんてなおさら。
何をするかというと、残念ながら話したいことを削る、しかない。任国の文化や出会い・学び・気づき、ひとりひとり違った物語があってそれら無しでは、帰国者の輝きって伝わらない。それでも、削る。

帰国して10年以上経った僕はいまだに、数百人に隊員時代について語るが、「伝わらんなー」とぼやく。
だからそれらの経験から気づいたことは、伝わらないことを前提に話さなければいけないこと。どこまでいっても伝わらない。それでも伝え続けることってすごく意味がある。

そう、どうせ伝わらないんであれば、出汁の一滴のような、本当に伝えたいことをど真ん中でお伝えすることってすごく大切なんだと思う。絞り出す出汁の一滴のプロセスの中で、自分と向き合い、気づきを得るの連続。

「え?そんな動機なら、帰国後教師になるでしょ!?」とツッコミどころ満載な小野さん

僕自身がイチ視聴者として興味があるのが、小野さんの動機と進路が食い違っていること。
元々、大学卒業してすぐに教員になろうと思っていた小野さん。でも、経験値が足りないから、広い視野での体験をした上で教育者になりたかったので、青年海外協力隊に参加を決意。

この流れでいくと、小野さんは帰国後、教師になるでしょって思うのですが、大学院を卒業して博士課程に進学。

きっと、色々な葛藤があっての決断だと思うので、ぜひそのところを当日お聞きしたいところだ。
まさに青年海外協力隊の醍醐味のひとつが、2年の海外経験の中で、自身の価値観がガラっと音を立てて崩れ落ち、新たな価値観ができあがる瞬間がある。
派遣前の自分では想像もしていなかった人生が、派遣後も起こることもしばしばある。このへんを、今回の帰国者報告会に織り交ぜてくださいとリクエスト。

「あの頃の自分に手を差しのべる」ってひとつのキーポイント

この1週間で2人の青年海外協力隊と話をした。
共通することは、帰国してからの生き方が、当時悩んでいた自分を救うため、と仮説を立てると一本の筋が通っている。
僕は現在、起業する人、業務委託で個人事業主と活動する青年海外協力隊専用の経理サービスを準備中。まさにこれって、帰国した当時の僕が欲しかったサービス。
僕は帰国して起業したかったけど、周りに経理を頼める人がいないから、自分が勉強するしかないと職業訓練学校で簿記を取得。それをきっかけに、経理の世界にハマってしまい、気づけば経理業界の中で生計を立てていた。ふと「協力隊の誰かのお役に立てるかも」と気づく。

ただ誤解してもらいたくないのは、国際協力やソーシャルビジネスって、当事者だからやっていいというものでもない。貧困や虐待を受けてない人だって、貧困や虐待の社会課題を解決する活動をするのは素晴らしいことだ。

僕が伝えたいことって、青年海外協力隊が帰国すると、「自分が学んだこと感じたことを活かしたい!!けど、何をしたらいいのかわからない」というジレンマがある人に、「あの頃の自分に手を差しのべることができたら、何をしますか?何を伝えますか?」ってこと。

10代の頃、何のために学校に行って勉強しているのかわからなくなってイライラしていた自分。
20代の頃、青年海外協力隊の応募の1度目に不合格となって諦めていた自分。
30代の頃、起業の相談したいけど、誰を頼っていいか悩んでいた自分。

「誰かのためにボランティアする」って大切なこと。
だからこそ、あえて誰かでもなく、過去の自分のためにボランティアするって視点があっても良いのかなと思った。

青年海外協力隊の社会還元って何なんだろうか。
隊員時代の要請と変わらないくらい、自分で考えて、自分で答えを出していくことが求められているような気がする。
とりあえず隊員時代のモットーだった、自分の行動を、自分にとっての模範解答にしていこうと思う。

告知・2025年7月19日(土)帰国者報告会in宮崎県

宮崎県海外協力協会は、2025年7月19日(土)に帰国者報告会を都城ウエルネス交流プラザで行います。
今回のメイン発表者の小野さん以外にも、帰国して10年以上経過した隊員のその後の国際協力の活動をお伝え予定です。

現在派遣中の隊員の方・宮崎県外にお住まいの協力隊の方・一般の方がご参加できるよう、オンライン参加も準備いたします。ご希望の方はこちらの参加フォームに入力ください。
https://forms.gle/RQeVGZUymbsMg7GV8

開催日時:令和7年7月19日(土) 13:30開始~16:00終了

     13時20分からオンラインに入室可能です。

内  容:1 帰国者報告(2022年度1次隊・ザンビア・理科教育隊員)

     2 その他2名による帰国後の社会還元報告予定

会  場:宮崎県・都城ウエルネス交流プラザ

     宮崎県都城市蔵原町11-25

駐 車 場:専用駐車場があります

そ の 他 :会の終了後、懇親会を開催します

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